犯罪を命じられる

ブラック企業
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チビ子はニコニコ商事で長年経理を担当していた。
とはいえ簿記も勉強していないどころかそれまで経理も事務も未経験、基本は入力作業やお金の計算と事務だけ。

経理前任者は会計士かなにかの資格持ちで、大手の合併とかの会計処理チームに入ったりする自称敏腕の爺様で資金移動や決算処理なども任されてたが、結局決算もめちゃめちゃ、最後はセコい横領かなにかしてクビになってた。

その他にも昔から社員に結構な横領をされた事などが度々あったらしく、そのため次はむしろ何にもわからない経理知識皆無女子を入れて作業だけさせようということでただの家近主婦の私が大抜擢されたのだろう。

経理の体制としては、社長の総チェックが入った出金やお金の移動をヨメ子が実行し、書類作成と会計相談と決算は顧問契約の会計事務所のT税理士、入金管理や事務作業や会計ソフトの入力などをチビ子が担当していた。

T税理士

このT税理士もなかなかのモラハラ臭、プライドが激高でオンナ子供や自分より下だと思った人間には傲慢な態度で雑に扱う事がある気分屋でめんどくさい男だった。
前にも書いたが、以前こちらの数か月分の入力データを彼のミスで消してしまった事があった。
「消えたので」と他人事のようにサラッと電話で言ってきた。謝らない。

彼に自覚はないがPCに弱い、理系じゃない。自覚がないからミスが治らない。ここまでデカいミスはこれ以外なかったけど。
自分のミスではないかの様な表現ばかりでけむに巻くように状態の説明をしてきたが、私にはすぐに何が起こったのかわかり、数か月分のデータをこちらが地道に再度入力しなおすしか方法がないことも同時に悟った。それにもう各書庫へ整理してしまっている伝票をまたかき集める必要があるので3倍ほどの時間がかかる、会社としては結構な損失だ。

すべてわかっていたけどどうしても彼のミスを認めさせたくて、「どうして消えたんですか?」「こちらが何か間違えたんでしょうか?」「そちらで戻していただけるんですか?」「それはどうすれば元に戻せますか?」を何度も何度も執拗に聞いてやった。そしてその返事を聞くたびに絶句してやった。
その後も何度も「データ残ってませんか?」などと圧力メールを送っては謝罪の機会を与えてやったが、結局最後まで一度も謝罪はなかった。
これに限らず普段から謝ったら負けのちっさい男だった。

社長から外線電話が回ってきた

ある日社長から内線がなり「チビ子さん、T税理士からちょっと話あるから」と外線を回された。
社長の外線がこちらに回ってくるのは珍しい事。妙に気を使った猫なで声だし要件言わないし不穏。
電話に出るとT税理士もなんとなく『折り入って』な雰囲気だった。

「あのね、チビ子さん、会計データをちょっと修正してほしいんやけどぉ、お願いできますかー。ちょっと今からやり方を説明するからメモとってくれる?」

私は教師と医者(Dr.)以外を先生と呼ぶ事も、呼んでる人間も、呼ばせる人間も嫌いだ。
彼は私の先生ではなく、私の立場はクライアント。
クライアントにお願いする側のくせにメモの指示するなよと思ったので
「難しそうですね、間違えると怖いのでお手数なのですが手順をメールで送っていただけないでしょうか」と言ってみた。
するとこんな返事が返ってきた。

「あのね、実はね、コロナの補助金あるでしょ、その関係でちょっと数件の売上の月をずらすだけなんだけどぉ、それってね、要は詐欺になるので法律に触れる事だから、僕はできないんですよ、なので、、」

そうか、じゃあメールできないよね。証拠残るもんね。そっかぁー。。。ってなんでやねん!!!
「それって私がやったら法に触れないんですか?違いますよね?私もそれはできません。」
「いやそれはね、ニコ社長からのあれで、僕はやり方を教えるように言われただけなので社長に言ってもらえますか。そちらで相談してください。」

社長室でのやりとり

社長に言われたからと言って本当に、何も知らなさそうな女子社員に自分は手を染めたくない犯罪の手順を教えようとする税理士Tヤバい。ほかの女子社員なら素直にメモってたな。

私は頭から煙がでそうなのを堪えつつ、とりあえず社長室に断りにいく。
詐欺行為だという事を隠し、私を騙して犯罪者にしようとした事、これはめっちゃ激怒していい事だと思うんだけど、とにかくこれ以上この事に関わりたくない、さらりとこの問題から消えたかった。
「社長すみません、先ほどT税理士から指示された件ですが、法に触れる事だと聞きました。ちょっとそれは私にも出来かねます。申し訳ありませんがお断りさせていただきます。」

とてもマイルドに訴えたつもり。
『ごめんごめん、そうかオッケー(バレたか)、ほなもうええから、変な事頼んでごめんな!』
最初の電話の猫なで声から推察して、こんな感じの反応を予想していた私は、予想に反して社長の本気のクズっぷりを見る事になる。
社長の表情はみるみる険しくなり、声を荒げた。

「何言うてんねん!ちゃうやん!法律とかそんな大したことちゃうねん!ほんまにあいつ(T税理士)何しょうもない事言うてくれてんねん(巻き舌)!知り合いの会社もみんなやってるねん、賢いとこはみんなやってるんやで、俺も教えてもらったんや!君らのために会社守るんにこっちも必死でいろいろ考えてんねやろ!
そんなな、詐欺やとか、犯罪の片棒担ぐみたいな言い方、せんとってくれ(巻き舌)!!!!
わかったもうええわ、出て行ってくれ。ちょっと考える」
と追い出されたのでした。「はいすいません、失礼します。」

ちょっと予想と違いすぎたのと罵声のせいで軽いパニック症状になる(たぶん健康な人でも誰でもなるよ)。
ただ、私は何にも悪くないし、むしろNOと言えてよかったよ、『私は正しい、悪くない』と言い聞かせるためにしばらく誰もいない倉庫にこもった。

その後の例えば、の話

その後どうなったのか、私は知らない。
というか、知りたくないので気配すら感じないよう怪しげな動きからは視線を外していた。

数日後に跡継ぎ君が会計データの修正の仕方を聞いてきたり、その後数回突然過去のデータが変わって事務の間で「合わない~」と騒ぎになったが、跡継ぎ君が「それちょっと間違えててこっちで修正した」と私に目配せしながら言ってきたりしたことがあるが、それ以上聞いていないので何のことか私は知らない。

しかし普通に考えて、あの時私が断った汚れ仕事をそのまま跡継ぎ君が指示された可能性は高い。
本当に社長が私に怒鳴ったように大したことない事ならば、本来の経理責任者でありデータ修正もできるヨメ子がやるはずでは?
それを跡継ぎとは言え血のつながりのない若い甥に、やった事もない会計処理をわざわざさせる。それがいかに汚れな仕事だったかという証拠と、社長という人間の闇の深さを物語っている。

自分とヨメ子だけは安全地帯から一歩も出ない、手を汚さない。
もし今後、万一問題になった時めっちゃ言いそうなこと、
「その時の経理がやったんちゃうか?チビ子というやつや」

まあそんな人間だから何度も身内に裏切られたりするんでしょうね。

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